開業に配偶者が参加することの功罪・メリットデメリットについて改めて考えてみる(振り返り歯科開業-第5回)

ついにこの時が来てしまいました。

振り返り歯科開業、最終回。

今回は、診療所開設者(≒歯医者さん)の配偶者が、開業に参加することについて書いてみたいと思います。想定読者は、開業前・直後の歯医者さんと、その配偶者。この企画中、もっともタッチィな話題?いつものことながら、長い!(長文!)です。
((((;゚Д゚)))))))

 

 

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▲この右手前がわたしです…(`ω´)グフフ

 

自己紹介いたします

あたくし名乗るほどの者じゃぁござんせん! …が、どこから目線なのかは明らかにする必要があると思います。従いまして、簡単に…。

院長は高3のクラスメート

院長こと井川範道くんとは、高校3年次のクラスメートでした。
……落ち着いてください。馴れ初めの話💖とかじゃないです。恋バナ💕✨とかじゃないです。
出会ったのは、福岡の進学校の理系選抜クラス。
なので、ごく大雑把に言うと、学力的にはそう次元が違うこたぁなかったと思います。というか負けてなかった。

サラリーマン時代に社会の力学を学んだ

事情により文転しまして、法学部卒。
混乱期のソフトバンク子会社に潜り込み、企業法務マンの道に。
ああいう会社なので、若輩ながら身に余る大きいお仕事を経験させて頂きました。

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▲何を捨て、何を得るのか…。それが重要だ。

写真の真ん中のビルで働いてました。

正方形の窓の、右上から3・3ぐらいかな。

後半…結婚が確実になってきてからは、一般職化を願い出て、勤務地を福岡に固定。不満タラタラでしたが、それでも学びは多かった。

歯科医院の開業に配偶者が参加するということ

その良し悪し。もう結論書いちゃう。
開業の成否

開業の成功率を上げよう、オープンする医院の水準を上げよう、という観点から言うと、そりゃあ配偶者が参加した方が良いに決まっています。
単純な話、人手は少しでも多い方が良いからです。
しかも、配偶者ともなれば、気心は知れ、クセも熟知しています。「初めまして」からスタートしなければならない、コンサルさんとは一線を画すわけです。
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▲井川歯科のロゴは私がデザインしたのですが、夫婦ともに気に入っています。しょーじき、会心の出来 (*ノωノ) それは、スキル云々より、パートナーの来歴、趣味と価値観を理解していたことが、成功要因になっていると思います。

開業準備作業への寄与度は、参加する人の、具体的な能力・スキル・参加度合によって、かなり様々だろうとは思います。私自身、法務マンとしての経験はそれほど役に立たず、どちらかというと間接的にかかわった広報の仕事や、サラリーマン一般に教育される技術のほうが役立ちました。

しかし個人の気持が大事

「歯科医院経営」に視座を置くと、十中八九、配偶者に手伝ってもらったほうが良いと思います。

しかし、医院が成功して、自分や配偶者が不幸せなら、やはり本末転倒というもの。そしてそれは有り得ないことじゃないハズです。

開業する側は、そりゃあ医院の成功と自己を同一視しやすい(開業成功=幸せ、となりやすい)でしょう。人はみな、「開業おめでとう」と歯医者さんである側に言います。いっぽうで、手伝う側は見返りがなければ、振り回されただけ。何なら、「良い旦那さん(奥さん)でラッキーだったね」ぐらいのことを言われます(そこは私がやったんだけど…ぐぬぬ)。見返りといっても、有形無形、さまざま考えられると思います。…もし、無形の見返りもないとしたら…??

サラリーマン時代、会社がぐいぐい大きくなっても従業員が幸せかどうかはまた別、ということをヒシヒシと実感しました(;´∀`) (会社の時価総額ほどには給与は伸びませんでした)。このことは小規模事業者でも変わらないハズです。

そして個人的結論

そんなこんなも含めて、私個人の偽らざる感想を述べると…

開業に参加して、良かったと思っています。後悔はしていません。過去に戻ってやり直せるとしても、同じ決断をすると思います。ただ、覚悟が足りなかった部分はあると思います。想像以上に自分の立場は空気だし、そのことへの忍耐はタイヘン。そこも含めた、「何を得たか」の部分は、今後も含めて捉えていきたいと思います。

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▲産後ありがちなこと、ソロショットがない。…つまり??

両性とも損得勘定を忘れないで欲しい。

知り合いの美容師さんに聞いた話。夫婦で美容院を開業したあと、経済条件が折り合わずに離婚したケースがあるそうです。

夢や情熱だけではなく、あらかじめ、開業のその後の「条件」をある程度話し合っておいたほうが良いかもしれません。

夫婦円満だの、内助の功だの、夫を(妻を)支えるだの…。正体不明のアヤフヤな美辞麗句で自分を励まして生きるには、人生はあまりに長く、1日24時間はあまりに退屈です。だって、医院ができてしまえばパートナー(歯科医師であるほう)はそちらに掛かり切りになってしまうワケで、その間…おそらく朝から晩まで、誰が貢献を労ってくれるんです?

メリット・デメリットを書き並べる。

参加する(してもらう)べきか、そうでないかの判断。手っ取り早い方法としては、開業して(それに参加して)得すること、損することを書き並べてみるのが良いと思います。

Good!

  1. 経済的にゆとりができる(かも)
  2. 時間の使い方に裁量ができる
  3. 立場ができる
  4. 会社に行かなくてもイイ
  5. 企画の実行にあたって面倒な社内根回しが要らない
  6. 役割を分担できる(例えば交渉術でいうGood cop / Bad cop的な)

Bad…

  1. 経済的に余裕がない(かも)+ステークホルダーが現れる
  2. 働かなかった分の収入減はモロにかぶる / 暇だと思われることも
  3. バイアスをかけて見られる(歯医者のヨメ/オットなんだから…)
  4. 会社に行くことができない(同僚がいない)
  5. 思い付いた企画の相談相手がいない
  6. 歯医者さん側を立てるために損な役回りに終始することも??

などなど。番号ごとに、表裏を書いている(対になってる)ので、見比べてみてください。

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クールに「家計の最大化」という切り口でジャッジすると間違えないかも

こまごまと考えるのが面倒な人は、従来路線でいった場合と、開業し(それに配偶者が参加し)た場合と、どっちが夫婦の手取り額が多そうかを考えてみると良いかもしれません。

開業へ大きく貢献できそうな人は、開業せずそのまま現在の働き続けてもそれなりの収入ということが考えられます。

働かずにそのぐらい暮らせるなら万歳バンザイでしょ?…みたいな目線を感じることがあります(被害妄想でしょうか…)。…しかし!!! まず、働いてないわけではなく、働きたくなかったわけでもなく(家事育児より勤め人のほうが楽です)、サラリーマンとして続行したほうが、直接自分に入ってくる収入としてはずっと多かったので、見当違いもいいとこなんですが、何気にお金周りの専門家がこういうこと言ってくるので、ビックリします。

開業すれば大成功というのは昔の話だろうと思います。

今はすでに時代も変わりました。この先も、世の中的には保険診療への目線が厳しくなる状況は避けれられないと思います。開業して、比較的うまくいっている部類になったとしても、サラリーマンのまま二馬力(=歯医者さん+配偶者・別々)で稼ぐ水準を追い越すのは実は大変??…という世相もあるかもしれません。

歴史に「もしも」は禁句と言うし。

それでも、抜け落ちてはいけない観点は、妊娠・出産・育児コスト。

これらのイベントも、より大きい企業に所属したままのほうが無理なく進められる場合もあると思います。実際、ウチも幼稚園まではほぼサラリーマンでしたし。だけど、その後のことを考えると、やり辛さを感じました。ガラスの天井というヤツです。

ばっきばきの総合職・専門職を続けていたら、愛する息子に出会うことができていたかというと、ちょっと疑問です。

状況に応じて、関わり方を変えられるというのは、自営業ならではの魅力だと思います。

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▲ざっくり無理に単純化すると、後ろのビルに居続けるより手前のコを選んだということに。

 

やっぱり参加してほしい、手伝って欲しいという場合には。

歯医者さん、またはその配偶者を想定読者として、ここまで記事を書いてきました。

もしあなたが背中を押してほしい方なら、煮え切らない記事で恐縮ですm(_ _)m だけどそのぐらい、自分で振り返ってみても、簡単にいい悪いを言えないテーマでした。背中押したかったんですけど。

締めは、自分なりの心がけを書きます(‘◇’)ゞ

歯医者さんから配偶者に対してあって欲しい配慮

つまり、この辺への配慮があれば、あなたの配偶者が、開業に参加する心理的ハードルが下がる…かも??

  • メリット / デメリットをきちんと提示する(「ついてこい!!!」みたなのはもっての外)
  • 生活が激変することへの配慮を忘れない(住環境(趣味・お買い物)・人間関係)
  • 失ったものへの共感(仕事(立場)・住環境)
  • 貢献への感謝を表現すること(「心の中でちょう想ってるYO!」とか全然ダメです。むしろ思ってなくても表現てくれたほうがマシなぐらいです。)

あなたの大事なパートナーを空気に、透明にしないこと!

そのための唯一絶対の防衛ラインは、歯医者さん本人、あなたなのです。

否定はしないだけどそれほど参加もしない、というのが実は一番賢明な策なのです

たぶん、このパターンが大多数だと思うんです。

「がんばって!応援する!」と言う(実際あたたかく支えてくれる)状態。ただ、それほど矢面に立ったり、事業上の提案があったり、あるいは何分野か受け持つ、ということはないという。やっても、受付・事務(純粋に新しい職場に就いたに近い)をやる、とか、帳簿の入力、とか、書類を出しに行く、といったルーティンワーク的なことに終始するという。つまりは、昔ながらの歯医者さん夫婦のパターンですね。税制が要因になっている部分も大きいと思います。

このパターンを選択するには、我々は前提条件が厳しく、私は野心がありすぎたようです。。。

 

道はまだ始まったばかり

いかがでしたでしょうか?

感覚がまだ生々しいうちに、少しでも同世代・より若い世代に役立つことがしたいと思い、やってみましたこの企画。今回が最終回です。

いっそソロでやり遂げる、というのもそれはそれで賢明な判断だと思うのですよ。なんならシングルのままやり遂げるかたも実際いますし。熟慮したことが大事。

 

連載的なことは、ロクに続いたことがないので、終わらせることができただけでも個人的には感無量です。反響が回収できたら、またいつか、何らかの企画を考えてみたいと思います。それまでは、また平常運転いたします。

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では、今回はこの辺で!! 井川歯科の裏方担当・いがわゆきこがお送りしました~♪